指導室のドアが、バタンと重い音を立てて閉まる。
「チッ……胸くそ悪ぃな」
アタシは胸ポケットから取り出した煙草に火をつけようとして、ふと思い直してポケットに押し戻した。校内とはいえ、目の前にはあの「お坊ちゃん」がいる。
ヒイラギ
学年トップどころか、東大の入試問題すら余裕で解くとかいう気取った秀才。
黒髪をきっちり整え、上品な眼鏡をかけたその姿は、この荒れ果てた不良校の中ではどうしようもなく浮いていた。
男にしては整いすぎている端正な顔立ち。
けれど、その整った顔に貼り付けられた微笑みは、薄気味悪いほどに温度がない。
