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○紗月の部屋・朝

机の上に昨夜のコンビニ袋。

紗月は制服に袖を通し、髪を整えながら鏡を見る。

紗月(心の声)「……助けてもらったのに。怖いのに、安心した。……でも、あの人と一緒にいたら危ない。距離を取らなきゃ」

リップを軽く塗り直し、息を吐く。

カーテン越しの朝日が眩しい。


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○教室・朝

教室に入ると、数人のクラスメイトが笑顔で迎える。

クラスメイトA「おはよ!昨日大丈夫だった?」

クラスメイトB「暗くなってたから心配したんだよ」

紗月「……大丈夫。ありがとう」

紗月(心の声)「……“大丈夫”って言うのは簡単。でも本当は……」

クラスメイトC「そうだ!今日の放課後、みんなで寄り道しない?ファストフードで集まろうって」

クラスメイトB「紗月さんもおいでよ!」

紗月「……私も?」

クラスメイトA「もちろん!」

紗月は一瞬ためらい、そして笑顔でうなずく。

紗月「…行ってみたい」

心の奥に小さな灯りがともる。


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○廊下・昼休み

友達と楽しげに歩く紗月。

そこへ角から不良先輩が現れる。

周囲の生徒たちが一瞬で距離をとり、廊下が静まる。

蓮司「……おい」

紗月は足を止める。友達も戸惑いの表情。

クラスメイトA「だ、誰……?」

クラスメイトB「……あの人、ウワサの……」

先輩は迷わず紗月の元へ歩み寄り、壁際に追い込む。

蓮司「昼、来なかったな。約束破ったな」

紗月「……私は、約束した覚えはありません」

周囲が息を呑む。

一瞬、先輩の目が細くなる。

次の瞬間、不敵に笑う。

蓮司「……言うじゃねぇか」

紗月は視線を逸らさず、唇をかむ。


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○ファストフード店・放課後

友達数人と円卓でポテトをつつく紗月。

笑顔が戻り、会話が弾む。

クラスメイトC「ほら、このプリ見て!」

紗月「え、かわいい!みんな楽しそう!」

クラスメイトB「次は○○さんも一緒に撮ろ!」

笑い合う時間。

紗月(心の声)「普通の放課後。……私が求めてたのは、こういう時間」

しかし——ふと窓の外に目をやる。

ガラス越しに、蓮司が外灯の下に立っている。

壁にもたれ、煙草の箱を指で回しながら、じっとこちらを見ている。

紗月(心の声)「……どうして。どうして追ってくるの……」

笑い声が遠くに霞む。

胸の鼓動が速くなる。


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○夜・帰り道

友達と別れ、夜道を一人で歩く紗月。

後ろから足音が聞こえる。

振り向くと、不良先輩が現れる。

紗月「……つけてたんですか」

蓮司「答えは決まってるだろ。楽しそうだったな」

紗月「……私、先輩と——」

蓮司「言うなよ。“一緒にいるのは嫌だ”って言ったら……俺、本気で怒るから」

紗月は息を飲む。

街灯に照らされた先輩の表情は笑っているのに、目は冗談ではない。


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○夜道・途中

先輩はスマホを取り出し、ちらっと画面を見る。

未読通知の嵐。

「親父」の名前。

無言で電源を落とし、ポケットに押し込む。

蓮司「……どいつもこいつも、勝手だ。俺を縛ろうとするだけで、何も聞かねぇ」

紗月「……」

紗月(心の声)「やっぱり……この人、本当は……」

紗月「……本当は、“縛ってほしい”んじゃないんですか」

一瞬、先輩の目が揺れる。

すぐに苦笑いに変わる。

蓮司「……バカだな。そんなこと言う奴、他にいなかった」


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○ラスト・夜道

先輩は紗月に一歩近づく。

彼の影が街灯の下で重なる。

蓮司「……お前は俺から逃げられねぇ。覚えとけ」

紗月「……!」

瞳が揺れ、声が出ない。

彼の言葉は鎖のように胸に絡みつく。

恐怖と安堵が入り混じり、紗月の心を掴んで離さない。