双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

私が女王になったら、貴族たちは私の夫を次々と薦めてくるだろう。
 私が隣における男はケントリンだけだと分かっているし、貴族たちにも国の再建に集中して貰いたい。

 それにしても、10歳で王族を捨てに行かされたケントリンは、すでに父親のモンスラダ侯爵から見切られていたはずだ。

 使えないと見捨てたはずのケントリンが、自分より高い地位にいくとは想像もしていなかっただろう。モンスラダ侯爵が、ケントリンに手の平を返したような態度で接してくるのが簡単に想像できておかしい。

 それでも、きっとケントリンは全く態度も変えず、地位が変わっても奢るこがない。そう言い切れる程、私は彼と多くの時を過ごしてきた。

 翌日、カリンの乗った帝国の船が出航したことを確認すると、私はセルシオ・カルパシーノの前に姿を現した。

「セルシオ・カルパシーノ国王陛下にアリアドネ・シャリレーンがお目にかかります」
 私を見て彼は明らかに動揺している。
 彼はカリンの正体に気がついていたのだろう。
 そもそも、双子とはいえ私はカリンと自分は全く似ていないと思っている。
 
「アリアドネ⋯⋯一体、どうして⋯⋯」
 自分が嵌められた事にすぐ気がつけていない。
 セルシオ国王は帝国に恩義があるせいか、帝国を信用し過ぎている。

「ここのところ体調が思わしくなくて、妹のカリンに結婚式の代役を頼んだんです。やっと回復したので、妻として陛下の元に戻って参りましたわ」

 パレーシア帝国まで2週間、ベリオット皇帝が回復してルイス皇子を皇太子に任命するまで最低でも1ヶ月はかかりそうだ。
(早く離婚したいけれど、仕方ないわね)

「アリアドネ、今日は部屋で休むと良い」
「はい、分かりました。それでは失礼します」
 私はドレスを持ち上げお辞儀をして下がった。

「アルタナ! 伯爵以上の貴族を緊急招集してくれ、緊急会議を開く!」
 私が部屋を出るのも待てないように、セルシオ国王が慌てている声が聞こえた。