双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

「頂いたお菓子の中に毒が入っていたみたいなんです」
 私はバルトネ王家を狙った陰謀なのかと思い、彼女に慌てて事の顛末を話した。

「ふふっ、アリアドネって実は顔と体だけなんじゃないの? もっと、頭を使ったら? それにしても、聖女様は祖国から連れてきたメイドもお助けにならないのかしら。私、あなたが神聖力を使ったところ見たこともないんだけど」
 冷たい目で見つめて来たクレアラ王妃に私は全てを察した。

「狙ったのは私の命ですね。なぜですか? 私が、王妃殿下に何かしましたか?」

「目障りなのよ⋯⋯あんたが、どんどん綺麗になるのが! 陛下も直ぐにあんたに夢中になるのが目に見えてるもの! 邪魔なのよ、存在そのものが! 陛下に言いつけたいならどうぞ、きっと可愛いあなたの言葉を信じてくれるわよ」

 私に怒鳴り散らして去って行く、クレアラ王妃の後ろ姿を見ながら私は彼女への復讐を誓った。

 1ヶ月が経っても私が特に何もバルトネ国王に言いつけもせず、普通に過ごしているのでクレアラ王妃は疑問に思っているようだった。
 
 クレアラ王妃がくれたお菓子は帝国のものではなかった。

 彼女の実家の領地でのみ生息しているマレミクの木の実で、致死レベルの猛毒があった。

 モリアナが死んだのは私の知識不足のせいだ。
 
 クレアラ王妃は私が毒を盛ってくると思っているようで、食事に気を使っていた。
 
 私はケントリンに「お暇」という名の仕事を任せた。

 モリアナの遺体をシャリレーン王国に埋葬しに行き毒草を採取してくること、独裁国家エウレパに密書を届けること、そして、カルパシーノ王国に捨てられたという私の妹が生き残ってないか探しに行くことだ。

 ノックをして部屋に入ってきたバルトネ国王に、私はビクついてしまう。
 なんだか最近陛下が私を見る目がいやらしくて気持ち悪い。
 
「アリアドネ、君のメイドと護衛騎士はどうしたんだ?」
「しばし、お暇をとらせました。シャリレーン王国から私に休みなく付き添ってくれた2人です」
「アリアドネは本当に慈悲深い聖女様だね」

 陛下が髪を撫でるように触れてくるけれど、わざと体にも触れるように手を動かされている気がする。

「陛下、提案がありますの。陛下が側室制度を貴族のバランスをとることに使っていたのは非常に賢い手段だと感嘆致しました。でも、そろそろ国の事だけではなく、ご自分の事を考えても宜しいのではありませんか?」

 私は新しい側室候補のリストを差し出した。