双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

 パレーシア帝国とバルトネ王国の立場が対等でないのだろう。
 それは両国が結んだ貿易協定の内容からも明らかだった。

 バルトネ王国よりも、パレーシア帝国に有利過ぎる貿易協定を結ばされているのがカルパシーノ王国だ。

 カルパシーノ王国が建国の時にベリオット皇帝に支えてもらった恩があるのは理解できる。
 しかし、建国からもう4年も経っている。

 不利な協定を交渉して、もっと平等な内容に変更していかないと国民が損をしてしまう。
 私はセルシオ・カルパシーノの政治手腕にいささかの疑問を抱いていた。

 ♢♢♢
 
 5日後、やっと起き上がれるようになった。
 やはり毒を盛っていたのは、私が予想したメイドだった。

 モリアナは私を心配して、食事を部屋に持ってきて毒味をしてから私に食べさせた。

 私は食事をしても、何の味も感じなくなっていた。
 毒の後遺症で私は味覚を失ってしまった。

「姫様! 今日はクレアラ王妃より、パレーシア帝国から取り寄せたお菓子も頂きましたよ」
 私はクレアラ王妃の心遣いに嬉しくなった。

 彼女の取り寄せる帝国のお菓子はとても高価なものだと聞いていた。
 味の分からない私よりもモリアナに食べて貰って、感想を聞いてお礼を伝えようと思った。

「モリアナ、実は今お腹がいっぱいなの。私の代わりに食べて感想を聞かせてくれると助かるんだけど⋯⋯」
 お菓子としては珍しい色だと思った。
 黄色くて丸っこいテカテカのもので、木の実のようにも見える。

 見かけとは違う食感と、味があるものも存在するのが帝国のお菓子だ。

「えっ? 良いんですか? 実は1度は帝国のお菓子を食べてみたいと思っていたんです」
 モリアナはそういうと、大きな口を開けてお菓子を飲み込んだ。

「待って、それって小さく割ってから食べるものだと思うけど⋯⋯」
 私が彼女の豪快さに思わず笑っていると、ものすごい勢いで彼女が血を吐き出した。

「ちょっと、モリアナどうしたの?」
 私は慌てて神聖力を使ったが、消えそうな光しか出て来なかった。
 彼女はそのまま血を吐き続けて、目を見開いたまま絶命した。

「誰か! 誰か来てー!」
 私が助けを呼ぶ声に、ゆっくりと歩いて近づいて来たのはクレアラ王妃だった。