双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

 私はまだ15歳で幼い。
 それに立場上はバルトネ国王の側室だ。
 彼は自分の妻に娼婦のようなマネをさせようとしている。

 「私はあなたの妻であり、アリアドネ・シャリレーンです。戦利品のように扱われているとは自覚しております。それでも、私にも意思やプライドがあります」
 思わず強い言葉を使ってしまった。
 バルトネ国王が怒って殴ってくる気がして、一瞬体が震えた。

 「アリアドネ、そんな事は国王陛下も分かっているわ。あなたの為にもクリス皇子殿下に気に入られた方が良いとおっしゃってるのよ」

 母親のようだと思ってたクレアラ王妃もバルトネ国王に同調している。
 言葉の意味は理解しているけれど、男に媚びるような娼婦のような真似はしたくなかった。

 高級娼婦はルドナ王国にいた時に散々見たが、男の性欲処理の道具のように見えて気持ち悪かった。
 
 「申し訳ございません。取り乱してしまって、しばらく部屋で頭を冷やします」
 私は部屋に戻って、シーツを被って泣いた。
 パレーシア帝国のクリス皇子は先月結婚したと聞いたのに、私と遊びたいと言っているらしい。
 どうして、そんな卑劣で不誠実な男が権力を持ってしまったのだろう。
 
 「姫様、お食事の時間ですけれど、こちらで食べられますか? クリス皇子殿下の件ですが、私は姫様が無理をする必要はないと思います」

「ありがとう、モリアナ。そうしてくれると助かるわ」

 シャリレーン王国にいた時からと同じ呼び方で「姫様」とモリアナは呼び続けてくれる。その呼び名がシャリレーン王国の姫として生まれた誇りを呼び覚ます。
 
 私はモリアナが持ってきた食事を食べた。
 しばらくして、体が異常にだるくなった。
 モリアナを呼ぼうと思ったが、今にも気を失いそうでなんとか寝巻きに着替えてベッドに横たわった。
  
 そのまま、私はベッドから起き上がれなかった。
 かなり時間が経った気がするが、手足も動かせずモリアナを呼ぶにも呼び鈴まで手が届かない。

(何これ、私、死ぬの? 息ができない。こんなところじゃ死ねないわ)

 とにかく、目を瞑り体を休めようと思った。
 少し眠れたようだったが、何やら体に違和感を感じる。