双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

「じゃあ、僕は行くよ。レイリン、よろしく頼むぞ」
 ルイス皇子が私の肩をポンポン叩きながら、微笑みかけて去っていった。
 そのような事をされたのは初めてで戸惑ってしまう。

 「ふふっ! 2人の仲は進展したようですね。何か、こちらまでドキドキしてきました。片想い同士頑張りましょうね」
 部屋に入ってきて、笑いかけてくるカリンの言葉に罪悪感が込み上げる。
 彼女は私と彼をわざと2人きりにしてくれていたのだ。
 
 彼女は私とルイス皇子の恋を応援しているつもりだろうけど、私は彼女を騙してセルシオ国王との仲を引き裂こうとしている。

「カリン、座ってください。まずは帝国のマナーを学びましょう」
 カルパシーノ王国とはだいぶ異なる帝国のマナーをまずは彼女に教えようと思った。私がマナーの本を出すと、彼女は本を手に取り全ページを凄い速さで捲った。

「パレーシア帝国の本はカルパシーノ王国では手に入らなかったので読むのが楽しみでした。お聞きしたい事があるのですが、234ページの5行目から11行目に書いてあったマナーが厳しいと思います」

 私は一瞬カリンが何を言っているのか理解できなかった。
(えっ? 今ので本を全部読んだの?)

 「下の身分のものから、上の身分のものに話しかけてはいけないのは厳しくないですか? そんな事をしたら、メイドはおとなしい子ばかりになってしまいます。仲良くなることが難しい気がするのです」

 カリンが何を言っているのか全く理解できない。

 メイドと仲良くなる必要は全くない。
 それよりも気になるのは、カリンが本当に本を捲るだけで内容を覚えてしまったことだ。

「カリン⋯⋯ちなみに15ページ目には何が書いてあったか覚えている?」
 私が恐る恐る聞くと、カリンは1語1句違わず答えてきた。
 
「聖女について書かれた本とかも帝国にはありますか? 聖女は今まで帝国で生まれることが常と聞きました。日記とかもあったら読みたいです。私と同じ力を持った人がどのように過ごしてきたのかが知りたいんです」
 
 一点の曇りもない輝く瞳でカリンが私を見つめてくる。
(綺麗な目⋯⋯本当に人間のものじゃないみたい⋯⋯)

 聖女に関する書物なんて彼女に見せられない。
 まるで人間扱いしていないように、帝国は聖女を利用し尽くしてきた。

 私は彼女のことを扱いやすいと侮っていた。
 
 彼女は神から選ばれた魂を持つ子だ。
 当然、神様はお気に入りの彼女に特別な能力を授けていた。