双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

「ラッセル・ルイモンと申します。アリアドネ王女殿下、非礼をお詫び致します。どうか剣をおさめてください。王女殿下に怪我をさせるわけにはいかないので、決闘を行うわけには参りません」

 ルイモン卿は明らかに焦っているが、口元が笑っていて謝罪が軽い。
 
「私に怪我をさせられるようなら、させてみろ! 相手の力量も計れぬ、口だけ達者のような者に負けるような私ではない! ルイモン卿! この場で尻尾を巻いて逃げ出すならば、皆、パレーシア帝国はそのような腰抜けを騎士に任命していると見做すぞ!」

 アリアドネは明らかにルイモン卿を挑発していた。
 ここで他国の王女に剣を向け怪我でもさせてしまったら大問題だ。
 しかし、彼女の威圧感が強くて、私はとても口を出せなかった。

「分かりました。では、オーラは使わずお相手致しましょう」
 ルイモン卿が剣を構える。
 私は祈るような思いで手を胸に当てた。
 
「では、はじめようか」
 アリアドネが素早く間合いをつめ、剣を振る。
 その剣を振るスピードのあまりの早さに、風を切る鋭い音がした。

 ルイモン卿は油断していたのか、慌てて彼女の剣を受けるが体制を崩した。
 その隙に彼女は低い体制で、また素早く剣を振るがルイモン卿もギリギリの所で後ろに飛び避ける。

 彼女の攻撃は一切の守りもなく連続で続いていて、ルイモン卿も焦りつつも本気を出してきているのが分かった。

(嘘でしょ? オーラを使ってないとはいえ、ルイモン卿は帝国で5本の指に入る屈強の騎士よ)

 もう、10分以上も両者譲らぬ攻防が続いている。

 アリアドネの殺気で空気が張り詰めているのが分かり、周囲の騎士たちはただ戦いを見守っていた。

 瞬間、アリアドネが可愛らしく笑ったと思うとルイモン卿が怯み、その隙に彼女の剣が彼の首に届いた。