彼女の琥珀色の瞳は優しい光で満ちていて、ずっと見ていたくなった。
「あの、興味本位のようなことを唐突に聞いて申し訳ないのですが⋯⋯その⋯⋯セルシオ国王陛下とは既に床を共になさったのでしょうか?」
はっきり言って、とんでもない不躾な質問だ。
こんな事を他国の王女に聞いているのだから、本来ならば国際問題になりかねない。
しかし、目の前のアリアドネには何を言っても許してくれそうな包み込むような優しさを感じていた。
(昨日の私のセルシオ国王陛下への無礼な失言も許してくれたわ)
ルイス皇子はセルシオ国王とアリアドネが現在どこまで進んでいるのかが気になって夜も眠れなかったらしい。
彼に何とかアリアドネに尋ねて欲しいと頼み込まれたので聞くしかない。
「そ、そんなこと! まだ、正式に結婚もしてないのにある訳ないじゃないですか!」
アリアドネは顔を真っ赤にして、手をバタバタさせながら否定した。
(良かった⋯⋯ルイス皇子殿下も心穏やかに眠れそうね)
「そうですよね。不躾な質問をしてしまい申し訳ございませんでした」
私たちの間に少し気まずい空気が流れた。
そして、その雰囲気を明るくするように彼女は謎の提案をしてきた。
「そうだ! 今、カルパシーノ王国の騎士団が剣技を披露しているのです。是非ともレイリン様に、カルパシーノ王国の騎士団の強さを見て頂きたいです。ご一緒して頂けますか?」
騎士団の剣技を、貴族令嬢の私に見て欲しいという彼女の意図は分からなかった。それでも、彼女がキラキラ輝くような瞳で誘ってくるので、気がつけば誘いを受け入れていた。
「あれ? パレーシア帝国の騎士も混じっていますね。何か揉めているようです」
彼女に連れられて行くと、私は思わず目を疑った。
カルパシーノ王国に向かう船の中で感じた嫌な予感が的中してしまった。
屈強な騎士団を持ち、豊かな国となり昨今では注目されているのがカルパシーノ王国だ。
しかし、帝国の騎士たちは歴史の浅いカルパシーノ王国を馬鹿にし、屈強な騎士団と言っても田舎の国々の中でお山の大将になっているだけだと嘲笑していた。
私は移動中の船でその会話を聞き、建国祭で決してそのような態度を取らないように注意したはずだった。
「セルシオ・カルパシーノ国王陛下が、世界最強の騎士だなんて絶対嘘だろう。オーラなら俺だって使えるぜ」
下品な物言いをして、不躾な態度をしているのは情けないことに今回同行してきた第2騎士団の騎士団長のルイモン卿だ。彼はパレーシア帝国でも名門貴族であるルイモン侯爵家の侯爵位を継いだばかりでもある。
(まだ若いとはいえ侯爵になった男の言葉遣いなの? カルパシーノ王国を軽んじすぎだわ)
私はこのままでは国際問題になると思い、止めに入ろうとした。
たかだか貴族令嬢に口出されたくないと不満を持たれても、次期皇后になるのならこれぐらいの場はおさめないといけない。
私が意を決して口を開く前に、剣を近くの騎士から奪い暴言を吐いたルイモン卿の前にアリアドネが立ち塞がった。
重そうな剣を彼女は片手で、軽そうに握りしめていた。
(う、嘘でしょ。何なの?)
「私は、アリアドネ・シャリレーン! 我が夫になる男セルシオ・カルパシーノを侮辱する言動、見逃すわけに行かない。貴様に決闘を申し込む。名を名乗れ!」
アリアドネが剣先をルイモン卿に向けて高らかに宣言している。
(アリアドネの替え玉の子は、一体何者なの?)
彼女のピンクゴールドの髪が風にたなびき、いつも優しい光を放っていた瞳は真夏の太陽のように燃え激っていた。
「あの、興味本位のようなことを唐突に聞いて申し訳ないのですが⋯⋯その⋯⋯セルシオ国王陛下とは既に床を共になさったのでしょうか?」
はっきり言って、とんでもない不躾な質問だ。
こんな事を他国の王女に聞いているのだから、本来ならば国際問題になりかねない。
しかし、目の前のアリアドネには何を言っても許してくれそうな包み込むような優しさを感じていた。
(昨日の私のセルシオ国王陛下への無礼な失言も許してくれたわ)
ルイス皇子はセルシオ国王とアリアドネが現在どこまで進んでいるのかが気になって夜も眠れなかったらしい。
彼に何とかアリアドネに尋ねて欲しいと頼み込まれたので聞くしかない。
「そ、そんなこと! まだ、正式に結婚もしてないのにある訳ないじゃないですか!」
アリアドネは顔を真っ赤にして、手をバタバタさせながら否定した。
(良かった⋯⋯ルイス皇子殿下も心穏やかに眠れそうね)
「そうですよね。不躾な質問をしてしまい申し訳ございませんでした」
私たちの間に少し気まずい空気が流れた。
そして、その雰囲気を明るくするように彼女は謎の提案をしてきた。
「そうだ! 今、カルパシーノ王国の騎士団が剣技を披露しているのです。是非ともレイリン様に、カルパシーノ王国の騎士団の強さを見て頂きたいです。ご一緒して頂けますか?」
騎士団の剣技を、貴族令嬢の私に見て欲しいという彼女の意図は分からなかった。それでも、彼女がキラキラ輝くような瞳で誘ってくるので、気がつけば誘いを受け入れていた。
「あれ? パレーシア帝国の騎士も混じっていますね。何か揉めているようです」
彼女に連れられて行くと、私は思わず目を疑った。
カルパシーノ王国に向かう船の中で感じた嫌な予感が的中してしまった。
屈強な騎士団を持ち、豊かな国となり昨今では注目されているのがカルパシーノ王国だ。
しかし、帝国の騎士たちは歴史の浅いカルパシーノ王国を馬鹿にし、屈強な騎士団と言っても田舎の国々の中でお山の大将になっているだけだと嘲笑していた。
私は移動中の船でその会話を聞き、建国祭で決してそのような態度を取らないように注意したはずだった。
「セルシオ・カルパシーノ国王陛下が、世界最強の騎士だなんて絶対嘘だろう。オーラなら俺だって使えるぜ」
下品な物言いをして、不躾な態度をしているのは情けないことに今回同行してきた第2騎士団の騎士団長のルイモン卿だ。彼はパレーシア帝国でも名門貴族であるルイモン侯爵家の侯爵位を継いだばかりでもある。
(まだ若いとはいえ侯爵になった男の言葉遣いなの? カルパシーノ王国を軽んじすぎだわ)
私はこのままでは国際問題になると思い、止めに入ろうとした。
たかだか貴族令嬢に口出されたくないと不満を持たれても、次期皇后になるのならこれぐらいの場はおさめないといけない。
私が意を決して口を開く前に、剣を近くの騎士から奪い暴言を吐いたルイモン卿の前にアリアドネが立ち塞がった。
重そうな剣を彼女は片手で、軽そうに握りしめていた。
(う、嘘でしょ。何なの?)
「私は、アリアドネ・シャリレーン! 我が夫になる男セルシオ・カルパシーノを侮辱する言動、見逃すわけに行かない。貴様に決闘を申し込む。名を名乗れ!」
アリアドネが剣先をルイモン卿に向けて高らかに宣言している。
(アリアドネの替え玉の子は、一体何者なの?)
彼女のピンクゴールドの髪が風にたなびき、いつも優しい光を放っていた瞳は真夏の太陽のように燃え激っていた。



