双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

「ルイス・パレーシア皇子殿下に、レイリン・メダンがお目にかかります」
「何か用か? 約束もないのに尋ねてくるなんて、僕の婚約者とは思えない不躾さだな」
 僕が冷たく言い放った言葉に、レイリンは一瞬顔色を変えたが、すぐに感情を隠した。

 「申し訳ございません、殿下。しかしながら、急ぎの懸念事項があったのです。先程、アリアドネ・シャリレーンに帝国に行ったら宜しくねと含みのある感じで挨拶されたのです。まさか、彼女を娶られる気ではございませんよね。聖女とはいえ、寝所で男を唆すという淫猥な女ですよ」
 
 レイリンは公爵家の1人娘として可愛がられてきた女だ。

 帝国の未来の皇后として家柄も含めて相応しいと、周囲からも誉めそやされてきた。
 彼女は自分は僕の為に努力していると、恩着せがましくアピールばかりしてくる。
 能力的にいえば、レイリンがアリアドネに優っている所など1つもない。
 僕はレイリンの傲慢なところが昔から苦手だった。

「アリアドネを迎えようと、僕が皇帝になったら君は皇后だ。それ以上を求めるな。それとも、おこがましくも僕がアリアドネに惑わされるとでも無礼なことを考えている訳ではあるまいな。不愉快だ! 下がれ!」

 僕の言葉にゆっくりとレイリンは頭を下げて、立ち去った。

 それから1週間後、僕は今まで感じたことのない感情を知ることになった。