自分の憧れを汚されたような気持ちになり、男へ媚びることで生きるしかなかった彼女を哀れに思っても気分が悪くなるのを隠せなかった。
「すまない。あまり女性に擦り寄られるのは好きじゃないんだ。先程、伝えた通り皇帝陛下の病を治す為にパレーシア帝国に同行して欲しい」
「良いですよ。その代わりに皇帝陛下が治癒した暁には、私をあなたの側に置いてください」
神は慈悲深い美しい心を持つ魂に神聖力を授け聖女としたという記述があった。
しかし、人助けに交換条件を出してくる彼女に慈悲深さは感じない。
帝国民の聖女信仰は厚いゆえ、アリアドネを迎えるならば相応の地位に置くことが望まれるだろう。
しかし、皇后になる要件は純潔⋯⋯というより皇帝になる男以外との男性関係を持った事がないことが必須だ。それゆえ、アリアドネを皇妃として迎えることはできても皇后とすることはできない。
「皇妃としてなら君を迎えると約束しよう。でも、君はこれからセルシオ・カルパシーノの妻になるんじゃないのか。建国祭の最終日に結婚式を執り行うと聞いているが」
「ふふっ、王女の私が元奴隷の男の妻になるなんて、嫌だといったではないですか。実は私には双子の妹がいるんですの。お父様がお母様の尊厳を守る為に昔捨てたらしいんです。運よく拾われて孤児院で生きているそうですわ。そのカリンという子を身代わりにしてセルシオ国王の元に嫁がせる予定ですわ」
昔、妹が捨てられたことを楽しそうに語る彼女は既に狂っているように見えた。
長い歴史の中で何度か双子の聖女が誕生した事があるから、カリンも神聖力を持っている可能性が高い。でも捨てられた彼女はアリアドネ以上に、過酷な環境で過ごしただろうから神聖力もほとんど残っていないだろう。神聖力は清らかな心を失うと同時に消失していくと言われている。歴史上、無限の神聖力を持っていたのは創世の聖女だけだ。
(カリン⋯⋯聖女はもう1人存在するのか⋯⋯)
シャリレーン教とは本当に理解できない宗教だ。双子は忌み嫌われるものとして扱われ、双子を出産した母親は悪魔に憑かれていると迫害されるらしい。
僕はアリアドネの提案を受け入れることにした。
アリアドネが去って直ぐに、レイリンが僕を訪ねてきた。
「すまない。あまり女性に擦り寄られるのは好きじゃないんだ。先程、伝えた通り皇帝陛下の病を治す為にパレーシア帝国に同行して欲しい」
「良いですよ。その代わりに皇帝陛下が治癒した暁には、私をあなたの側に置いてください」
神は慈悲深い美しい心を持つ魂に神聖力を授け聖女としたという記述があった。
しかし、人助けに交換条件を出してくる彼女に慈悲深さは感じない。
帝国民の聖女信仰は厚いゆえ、アリアドネを迎えるならば相応の地位に置くことが望まれるだろう。
しかし、皇后になる要件は純潔⋯⋯というより皇帝になる男以外との男性関係を持った事がないことが必須だ。それゆえ、アリアドネを皇妃として迎えることはできても皇后とすることはできない。
「皇妃としてなら君を迎えると約束しよう。でも、君はこれからセルシオ・カルパシーノの妻になるんじゃないのか。建国祭の最終日に結婚式を執り行うと聞いているが」
「ふふっ、王女の私が元奴隷の男の妻になるなんて、嫌だといったではないですか。実は私には双子の妹がいるんですの。お父様がお母様の尊厳を守る為に昔捨てたらしいんです。運よく拾われて孤児院で生きているそうですわ。そのカリンという子を身代わりにしてセルシオ国王の元に嫁がせる予定ですわ」
昔、妹が捨てられたことを楽しそうに語る彼女は既に狂っているように見えた。
長い歴史の中で何度か双子の聖女が誕生した事があるから、カリンも神聖力を持っている可能性が高い。でも捨てられた彼女はアリアドネ以上に、過酷な環境で過ごしただろうから神聖力もほとんど残っていないだろう。神聖力は清らかな心を失うと同時に消失していくと言われている。歴史上、無限の神聖力を持っていたのは創世の聖女だけだ。
(カリン⋯⋯聖女はもう1人存在するのか⋯⋯)
シャリレーン教とは本当に理解できない宗教だ。双子は忌み嫌われるものとして扱われ、双子を出産した母親は悪魔に憑かれていると迫害されるらしい。
僕はアリアドネの提案を受け入れることにした。
アリアドネが去って直ぐに、レイリンが僕を訪ねてきた。



