「カルパシーノ王国か⋯⋯そういえば、建国祭の招待状が来ていたな」
「カルパシーノ王国に行く際には娘も是非同行させてください。聖女アリアドネに接触し、帝国に彼女を連れてくることさえできれば皇位は殿下の手に渡る可能性が極めて高くなります」
メダン公爵は相変わらず強かな男だ。
聖女アリアドネを連れてきて、皇帝が会話ができる程度まで回復させる事ができれば僕が次期皇帝になれる確率が上がる。
そして、僕が男どもを惑わしてきたアリアドネに引っ掛からないようお目付け役に娘を同行させようとしている。
それにしても、アリアドネ・シャリレーンとは不幸な女だ。彼女がパレーシア帝国に生まれていれば、聖女として大切にされた。
パレーシア帝国は創世の聖女マリアンヌと初代皇帝リカルドにより建国されたという伝説があるからだ。
戦争を繰り返す野蛮な国が集まっている北西の小国に生まれた事が彼女の不幸のはじまりだ。彼女は貴重な神聖力を持つ聖女として生まれながら、その身柄は戦利品のように各国で扱われている。
「カルパシーノ王国か⋯⋯気が進まないが、仕方がないな」
僕はレイリンを連れて、大嫌いなセルシオ・カルパシーノの治めるカルパシーノ王国へとたった。
人を褒めない父が常に褒めていたのが、セルシオ・カルパシーノだ。父は卑しい元奴隷の彼に惚れ込み、彼の建国の手伝いまでしたのだ。
カルパシーノ王国に到着し、宿泊する離宮に案内されるなり僕はちょうど王宮にいるというアリアドネ・シャリレーンを部屋に呼んだ。
「ルイス・パレーシア皇子殿下に、アリアドネ・シャリレーンがお目にかかります」
噂通りの恐ろしい程の美貌を持つ彼女は、悲しいほどに荒んだ瞳をしていた。
少し会話をしただけで、彼女が非常に頭の回転が早く政治感にも優れていることが分かった。計算し尽くされた視線や仕草は艶かしく、今まで3カ国の国王を骨抜きにして来たことも頷けた。
しかし、僕は失望を隠せなかった。
自分でも驚いたが、僕は夢見がちな男だったらしい。
誰もが一目で愛さずにはいられない聖女という存在に、漠然と憧れを抱いていた。
僕は類い稀なる美貌と生まれからか、幼い頃から女性に誘惑され続けてきた。
その中には婚約者のいる高位貴族もいて、女というものに日々呆れていた。
そんな僕も初代皇帝リカルドと創世の聖女マリアンヌが一目で恋に落ち求め合ったように、聖女に会えば心が動くかと思った。
しかし、アリアドネも僕を誘惑してきた女と変わらなく見えた。
「ルイス皇子殿下、私、元奴隷の妃になるなんて嫌ですわ。殿下のような高貴な方の女になりたいのです」
そっと僕の胸に手を添えて、擦り寄ってくるアリアドネに寒気がした。
「カルパシーノ王国に行く際には娘も是非同行させてください。聖女アリアドネに接触し、帝国に彼女を連れてくることさえできれば皇位は殿下の手に渡る可能性が極めて高くなります」
メダン公爵は相変わらず強かな男だ。
聖女アリアドネを連れてきて、皇帝が会話ができる程度まで回復させる事ができれば僕が次期皇帝になれる確率が上がる。
そして、僕が男どもを惑わしてきたアリアドネに引っ掛からないようお目付け役に娘を同行させようとしている。
それにしても、アリアドネ・シャリレーンとは不幸な女だ。彼女がパレーシア帝国に生まれていれば、聖女として大切にされた。
パレーシア帝国は創世の聖女マリアンヌと初代皇帝リカルドにより建国されたという伝説があるからだ。
戦争を繰り返す野蛮な国が集まっている北西の小国に生まれた事が彼女の不幸のはじまりだ。彼女は貴重な神聖力を持つ聖女として生まれながら、その身柄は戦利品のように各国で扱われている。
「カルパシーノ王国か⋯⋯気が進まないが、仕方がないな」
僕はレイリンを連れて、大嫌いなセルシオ・カルパシーノの治めるカルパシーノ王国へとたった。
人を褒めない父が常に褒めていたのが、セルシオ・カルパシーノだ。父は卑しい元奴隷の彼に惚れ込み、彼の建国の手伝いまでしたのだ。
カルパシーノ王国に到着し、宿泊する離宮に案内されるなり僕はちょうど王宮にいるというアリアドネ・シャリレーンを部屋に呼んだ。
「ルイス・パレーシア皇子殿下に、アリアドネ・シャリレーンがお目にかかります」
噂通りの恐ろしい程の美貌を持つ彼女は、悲しいほどに荒んだ瞳をしていた。
少し会話をしただけで、彼女が非常に頭の回転が早く政治感にも優れていることが分かった。計算し尽くされた視線や仕草は艶かしく、今まで3カ国の国王を骨抜きにして来たことも頷けた。
しかし、僕は失望を隠せなかった。
自分でも驚いたが、僕は夢見がちな男だったらしい。
誰もが一目で愛さずにはいられない聖女という存在に、漠然と憧れを抱いていた。
僕は類い稀なる美貌と生まれからか、幼い頃から女性に誘惑され続けてきた。
その中には婚約者のいる高位貴族もいて、女というものに日々呆れていた。
そんな僕も初代皇帝リカルドと創世の聖女マリアンヌが一目で恋に落ち求め合ったように、聖女に会えば心が動くかと思った。
しかし、アリアドネも僕を誘惑してきた女と変わらなく見えた。
「ルイス皇子殿下、私、元奴隷の妃になるなんて嫌ですわ。殿下のような高貴な方の女になりたいのです」
そっと僕の胸に手を添えて、擦り寄ってくるアリアドネに寒気がした。



