双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

「セルシオ・カルパシーノ国王陛下⋯⋯この子たちは自分たちの育った場所が燃えてしまい傷つき疲れています。どうか、すぐにでも温かい寝床を用意して欲しいのです」

 私はセルシオに今すぐにでも抱きつきたい気持ちを抑えて懇願した。

 今晩の火事によって、どれだけ子供たちが怖い思いをして傷ついたかを考えるだけで胸が締め付けられた。
 
「アリアドネ⋯⋯君だけ足が傷だらけだ⋯⋯」

 心優しいセルシオは私の足を見て、心底心配していた。

 孤児院にいた18名の子どもも、ミレイアと私も素足で逃げ出していた。

 それゆえ、ここまでの道のりを素足で歩いてきた。

 途中、神聖力でみんなの足の治療をした。
 
「神聖力って、実は自分自身のことは治癒できないのです。でも、大切な人を治癒できる力です。セルシオ国王陛下と私はこれから夫婦となります。陛下を傷つける全てのものから守りたいと思っております。目にみえる傷だけでなく心の傷も私に見せてください。私はあなたを幸せにする為に存在しています」

 自分でも不信がられることを言っている自覚はあった。
 でも、時を戻すことに成功し、首のつながった愛おしい人が目の前にいる。
 私は彼への気持ちを隠すことができなかった。

「俺も君を守りたいと思っていることを忘れないで欲しい。傷の治療を受けてくれ」

 セルシオが私をお姫様抱っこしようとした時、不安そうな子どもたちの視線を感じた。私はそっと首を振って子供たちと手を繋いだ。

「陛下、今は火事があって急に住む場所を失った子たちとずっと一緒にいたいのです。とても恐ろしい時間を過ごして心に傷が残るかもしれません。私はこの程度の傷なら大丈夫です。明日から建国祭ですね。みんな楽しみにしてますよ。陛下は主役なのですから、しっかり部屋で休んでください」

 セルシオはとても過保護な人だ。
 足の傷くらいどうって事ないのに、私の心配をしてくれる。

 彼に抱きついて好きだと伝えたいけれど、彼にとってアリアドネは会って間もない相手で戸惑ってしまうだろう。
(今は、私ばかりが好きなのね⋯⋯)

 回帰前も彼が私のことを好きだったと知ったのは、彼が絶命する直前だった。

 いつ彼が私を好きになってくれたのか分からないが、少なくとも彼は出会って直ぐに女に惚れそうな男ではない。

「アリアドネ⋯⋯夫婦になるんだから、陛下ではなくセルシオと呼んで欲しい。君のことは、どのように呼べば良いだろうか?」

 セルシオは思いやりに溢れた人だ。
 私が心を開けるようにと、自分から距離を縮めようとしてくれている。