双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

先ほどアルタナに彼女を娶らないと約束した。
 しかし、これ程に不幸で荒んだ瞳をした女を放っておくことができなかった。
 
 それから、アリアドネをカルパシーノ城に連れて行った。
 彼女の視線も動きも全てが艶かしく計算し尽くされたものだった。
 すれ違うものが、皆彼女に見惚れて動きを止めている。

 既に彼女はこの城の男たちを思うままに操る算段をしているのかもしれない。
 破滅を求め愛してしまう程に絶望を見てきただろう彼女が哀れだった。
 彼女が心から自然に休める場所を提供してやりたいと思った。

「カルパシーノ国王陛下。1週間後には、建国祭が始まるのですね。これから暮らす、この国を見て回ってこようと思いますわ。よろしければ結婚式は建国祭の最終日に致しませんか? 今年の建国祭にはパレーシア帝国のルイス皇子殿下までいらっしゃるとお聞きしました。では、次は結婚式の日にお会いしましょう」

 俺の頬に軽く口づけを落とすと、魅惑的に微笑んでアリアドネは護衛騎士と去っていった。

 確かに各国の要人がちょうど集まっている、今、結婚式を挙げるのは悪い提案ではない。

 しかし、後の報告でアリアドネが離宮に滞在中のベリオット・パレーシア皇帝の息子であるルイス皇子と接触していたとの報告があがっていた。

(アリアドネは何を企んでいるんだ? 一時の同情心で、とんでもない爆弾を引き入れてしまったかもしれないな⋯⋯)

 1週間後の真夜中、城門が開くのが窓から見えた。

俺は不審に思い外に出ると、そこには太陽のような瞳をした美しい女がいた。
(真夜中なのに太陽がある⋯⋯)

「セルシオ・カルパシーノ国王陛下に、アリアドネ・シャリレーンがお目にかかります。本日からお世話になります」

 震える声で挨拶をする彼女に言いようのない愛おしさが込み上げた。抱きしめたくなるる衝動を抑えると同時に、俺は耳を疑った。
(アリアドネ・シャリレーン?)

 言われてみればピンクゴールドの髪や琥珀色の瞳に整った顔立ちといった身体的特徴は似ている。

 でも、目の前の目を離せない女神のような女性と、俺の知っているアリアドネ・シャリレーンはまとっている雰囲気が全く違った。