双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜

高低差から豆粒ほどの大きさにしか、みんなが見えないのに期待で輝く表情が見えるような感覚に陥った。

 シャリレーン教による王族を神のように崇める教えのせいで、彼らは私が戻って来ただけで国の状況が好転すると勘違いしている。

 私は5年以上も留守にしたのに、国が荒廃するばかりで誰も国をどうにかしなかったことに失望していた。

 しかし、落ち込んでいる暇など私には1秒たりともない。
 
「今日は皆様に19年前、シャリレーン王家が犯した罪についてお話しします」

 私の言葉に国民が騒つくのが分かった。
 そして、皆がカリンに注目している。

 私と似ている彼女がいることに、皆が母アンレリネが悪魔に取り憑かれ双子を産んだ真実を明かそうとしていると思っているのが分かった。

 悪魔に取り憑かれていたのは私を含めこの国の異常な宗教だ。

 他国からどう思われているかにも気づかず、王家を崇めていれば幸せになれると勘違いしている。自らは国の為になんの努力もしようとしない怠惰な国民性はそうやってつくられてしまった。

「私の母アンレリネ・シャリレーンは双子を産みました。母が迫害されるのを恐れ、先王であるレイサイア・シャリレーンは私の妹をカルパシーノ地方に捨てました。その子が隣にいるカリンです」

 私の言葉に自分が紹介されたことに気がついたカリンがドレスを持ち上げて挨拶をする。
 彼女の女神のような清らかで美しい姿に周りが息を呑むのが分かった。
 
「カリンは創世の聖女の生まれ変わりです。無限の神聖力を持つ神にも等しい存在でした。シャリレーン王国は悪しき風習により、神を捨ててしまった国家なのです」

 国民が悲鳴のような声をあげているのが聞こえる。

 でも、私は多くのシャリレーン王国の国民が双子が生まれた際、片方を処分してきたのを知っていた。
 悪しき風習により失われた多くの命が、神に助けを求めカリンはこの地に生まれたのかもしれない。