咲かない春に、君を想う


 「クラス一緒だし、修学旅行も一緒だね。小春、よかったね!」
 遥桜が笑顔で私の背中を押す。
 「……うん」頷きながらも、心は全然落ち着かない。隣を歩く彼の横顔が、夕暮れに淡く浮かんで見えた。

 しばらくは私が遥桜に隠れて彼と…朔とただ歩いてるだけだった…
 ふいに遥桜が「あっ」と声を上げる。
 「ごめん、小春!ちょっと寄り道あるの忘れてたから、ちょっと先行ってて!」
 「え、ちょっと――」呼び止める前に、彼女は軽やかに手を振って駆けて行った。

 残されたのは、私と彼。
 言葉が出なくて、ただ足音だけが並んで響いた。
 横目でそっと覗いた彼の横顔に、胸の奥がぎゅっと詰まる。

河川敷を2人でただただ歩いている時間が過ぎる。

「……そういえば」
彼がふと思い出したように言う。
「あの図書館よく使うの?」

一瞬、足が止まる。
「え?」

「ほら、昨日と、一昨日?君に会ったけどもっと前から使ってたのかなって」
「ううん…一昨日が初めてだったよ」
「そうなんだ。俺はねあの図書館によくあるから、もしかしたらまた会うかもね」

そう言いながら彼は微笑みながら私の目を見た。
頬が熱くなるのを感じて、慌てて顔をそらした。
春の風がちょうどその瞬間、髪をさらっていった。