90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦

私より先に出て行ってしまう。

誰も口には出さないが、親睦会という名の合コンだったはずが、…最悪な事態になってしまった。

絵梨花を見たら、大丈夫だからと頷いていた。

「あーぁ、やっぱり帰ったか…仕方ない、残った俺たちだけで、後でカラオケに行こうか?」

渡部さんのファインプレーに、この場の雰囲気も明るくなったので、私を気にかける絵梨花と渡部さんだけに、軽く会釈して部屋を出た。

そして、店を出てすぐ、タバコを吸って立っている向井さんと出くわした。

なんで、そんなとこにいるのよ…

彼の前を通らないと帰れない私は、小声で「お疲れ様でした。おやすみなさい」と言いながら通り過ぎようとした。

「ももじりっこ…待てよ」

「なんですか?」

ムカっとなり声を荒げて返事すると、彼は可笑しそうに笑い出す。

余計に腹が立ってきて、服を汚されたやり場の怒りもあって、八つ当たりする。

「ももじ、りこです。わざと言い間違えないでください」

「たいして変わらないだろう」

「変わります。それで、呼び止めた理由は何ですか?ただ、ももじりっこって、からかう為だけに呼んだなら、セクハラで訴えますよ」

「…それは困る」