継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「レドモンド卿は、君を連れてくるたびに、私に『娘はやらないからな』と釘を刺していてね」
「……え? あ、あの、どういう、意味……」

 台詞の意味が全く分からない。

 お父様とヴィンセント様が気さくにお話をされる仲だった、ということは分かる。分かるけど、きっと、彼が伝えたいことの本質はそれではないのよね。
 お父様は幼い私がヴィンセント様に恋をしていると思っていた。つまり、私は彼に会っていた、ということ?

「まだ、思い出さないか」

 楽しそうに笑みを浮かべたヴィンセント様は、私に手を差し出した。

 握手を求めている手ではない。
 それが何を意味しているのか分からず、硬直していると、彼の手の上でぽんっと小さな音が弾けた。よく見ると、そこに小さな植物の芽があった。

 小さな芽は突然、蔦となってするすると伸びていく。その光景を茫然と見ていると、伸びた蔦は私の座っている椅子に巻き付いた。

「大きくなったね、ヴェルヘルミーナ」

 ヴィンセント様が、私の名を呼んだ瞬間、蔦に芽吹いた花の蕾が一斉に咲いた。