継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 体が大きくて威圧感があると思ったけど、微笑まれると優しそうにも見えるわ。きっと綺麗な顔をしているからね。
 思わず、その顔に見とれてしまうところだったけど、まじまじと男性の顔を見る訳にもいかないわ。

 私に少しでも微笑んでくれるということは、少なからず好感は持ってくれてるのよね?
 勇気を出さなければ。まずは、会話をして好印象を持たせて、それから、レドモンド家の事情を話して──

「あの、ヴィンセント様……」

 勇気を出してその名を呼んだというのに、彼は大きな肩を小刻みに揺らして顔を逸らした。

 ちょっと、何なのかしら。
 ヴィンセント様はさらに、その大きな手で顔を覆ってしまった。表情はさっぱり分からないわ。小さく、ふっと笑いを堪えるような声まで聞こえてきたんだけど。

 えっ、私、笑われている──!?