継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 この屋敷は、ヴィンセント様が主ではなかったのかしら。それとも、初めからどなたかがローゼマリア様を訪ねてくる予定だったのか。疑問に首を傾げていると、ふと頬に突き刺さるような視線を感じた。
 そちらを振り返ると、ヴィンセント様の琥珀色の瞳が私をじっと見ていた。

 そうだった。彼と二人きりになってしまったんだわ。傍にダリアと、屋敷の侍女たちが控えているとはいえ、会話は私たちで何とかしなければならない。

 何をお話しすればいいのかしら……

 ここで唐突に政略結婚のお話を持ち掛けるのは、いささか不利になりそうよね。商談だって、相手の良いところを知った上でご機嫌を取ったり、話を引き出してから交換条件を提示するものだから──悶々と考えながら黙っていると、ヴィンセント様は唇の端を上げて小さく笑った。