継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 ヒグマのような大男だとか、にこりとも笑わず眼光だけで人を殺せるなんて、誰が言ったのよ。確かに、ものすごく背が高くて、見上げていると首が疲れるけど。

 ご年齢は二十八歳と聞いていたけど、年齢不詳の輝きをまとったイケメンだわ。
 断られても諦めきれずに縁談を持ち掛けるのは、家柄云々だけじゃなくて、彼の美しさにご令嬢たちが酔ってしまってのことなのかもしれない。

 ただ、その高身長のためか、こうして見上げていると、何だか居心地の悪さを感じて委縮してしまう。何て言うか、亡きお父様が私を冷たい眼差しで見下ろした時を彷彿とさせるというか。

「さあ、こちらへいらっしゃい」

 ローゼマリア様に促され、まるで金縛りにでもあっていたように硬直していた私は、やっとヴィンセント様から目を逸らすことができた。

 ヴィンセント様が私へ手を差し出した。
 初めて受けるエスコートに、胸が早鐘を打つ。
 大人と子どもほど大きさの違う手のひらに指をそっとのせた。そうして、案内された席に座って、ようやっと一息つけた気がした。