継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします


 一瞬、緊張が走った。
 でも、ローゼマリア様は特に焦りを見せることもなく、ダリアの肩に手をそっと置いた。

「心配には及びませんよ。お下がりなさい」

 穏やかな声に命じられたダリアは、私に視線を送って来た。それに頷くと、彼女は少しばかり眉間にシワを寄せながらも後ろへと下がった。

 花びらが舞い上がり、風が渦巻く魔法陣の上に人影が浮かび上がる。

 息を飲んだ直後だった。風が霧散して、長身の男性が現れた。
 身に着けるのは濃紺の外套。
 ひらりと風に舞う赤い薔薇の花びらが、男性の肩に落ちてきた。それに気づいた彼は、長い指で花びらを摘まみながら、こちらを振り返った。
 すらりと長い足が踏み出されると、その指から赤い花びらが、離れていった。

 揺れる銀髪は腰まで長い三つ編みだ。どこかで見たような気がするけど、どこだったかしら。

 近づいた彼の襟元の徽章(きしょう)が、差し込んだ陽射しを浴びて輝いた。それは、国の魔術師団に所属していることを意味している。
 つまり、この方が私の結婚相手──