継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 中庭に出ると、そよぐ風が前髪を揺らして抜けていった。

 バラの蔦に彩られる中、カモミールやラベンダーなどのハーブも、植えられているのが目についた。風が甘く優しい香りを届けてくれるのは、その花々の芳香なのだろう。
 美しい庭園を吹き抜ける風が、嫌な気持ちを何もかも持っていってくれるようだ。

「ヴェルヘルミーナ、とても素敵な笑顔よ。ふふっ、花は好きかしら?」
「え?……はい」

 花が嫌いな人なんていないと思うんだけど、そんなに見とれていたのかしら。
 少し恥ずかしくなって俯いた時だ。

 ひときわ強い風が舞い上がり、庭園の中にある美しいモザイクタイルの上に、魔法陣が浮かび上がった。

「ヴェルヘルミーナ様!」

 声を上げたダリアは、私たちの前に飛び出し、魔法陣に向かって身構えた。