いたずらな風は、煌びやかなドレスや丁寧に結い上げられた髪を乱して吹き抜けていく。
お祝いに集まった令嬢たちから、次々に小さな悲鳴が上がった。
私も思わず小さく声を零し、前髪が乱れないように慌てて抑えようとした。すると、上げた手からハンカチがはらりと抜けていった。
風が私の宝物を攫ってしまうと気づき、とっさに指を伸ばした。
だけど、一段と強い風が吹き抜け、ハンカチは風に流されていってしまう。
「あっ! お母様の……」
「何をしているのです。行きますよ」
「で、でも……!」
「あのような古い布切れを今でも持っているだなんて、恥ずかしいと思わないのですか」
眉間に深いシワを刻んだ継母は、小声で「だから捨てたのに」と憎々しそうに吐き捨てた。
捨てた──なんども捨てろといわれ、奪われ、その度に取り返してきたことを思い出し、堪らずに唇を噛んだ。
お祝いに集まった令嬢たちから、次々に小さな悲鳴が上がった。
私も思わず小さく声を零し、前髪が乱れないように慌てて抑えようとした。すると、上げた手からハンカチがはらりと抜けていった。
風が私の宝物を攫ってしまうと気づき、とっさに指を伸ばした。
だけど、一段と強い風が吹き抜け、ハンカチは風に流されていってしまう。
「あっ! お母様の……」
「何をしているのです。行きますよ」
「で、でも……!」
「あのような古い布切れを今でも持っているだなんて、恥ずかしいと思わないのですか」
眉間に深いシワを刻んだ継母は、小声で「だから捨てたのに」と憎々しそうに吐き捨てた。
捨てた──なんども捨てろといわれ、奪われ、その度に取り返してきたことを思い出し、堪らずに唇を噛んだ。


