継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「無能な子を産むのよ。それがお前の役目」
「……役目? どういうこと、ですか?」
「次男の婚約者は病に臥せっている。三男はまだ婚約を結んでいない……これで、無能な次代が生まれたら、ちょっとした騒動になるでしょ?」

 私に、騒動の種になれということか。その騒動を利用して、継母、あるいはペンロド公爵夫人が何かを仕掛けようとしているのだろうか。
 継母の話がうっすらと見えてきて、背筋がいっそう冷えるのを感じた。

 赤い唇がつり上がる。悪女と呼ぶに相応しい醜悪な顔だ。その手袋に隠れた指先も、きっと赤い唇と同じように染まっているのだろう。

 扇子の端が、私の顎をくっと持ち上げた。

「ペンロド公爵夫人のためよ。無能なお前も、顔と体は良いのだから、女の武器を使ってロックハートの長男を骨抜きにしてきなさい」
「……わっ、私なんか、きっとすぐに離縁されます!」
「ふんっ。離縁されたら、お前は修道院行きよ。二度と、この家に踏み入ることが出来ないようにしてあげる」

 修道院──そんなことになったら、何も出来なくなってしまう。