継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 亡霊のように、脳裏に現れた冷たいお父様の顔を振り切るよう、私は愛しい弟セドリックの笑顔を思い出した。
 無能と罵られても、弟の為に私は闘わなければならない。継母に負ける訳にはいかないのよ。

 震える手を握りしめ、カラカラに乾いた喉に唾液を流し込んだ。

「長いこと、お前を隠してきたかいがあるってものね。お前は望まれながら嫁いだ先で、無能な子を産むのよ」
「仰る意味が、分かりません……」
「本当に無能だこと」

 閉ざされた扇子の先がとんっと私のお腹を叩いた。丁度、子宮の辺りを、繰り返しとんとんっと軽く叩かれる。
 それが意味していることを考え、思わず頬を染めてしまった私は、継母から顔を逸らした。

「お前の価値なんて、子を成すことくらいじゃないか。それも、無能な子をね」

 この人は何を言ってるのかしら。
 子を成す以前に、私なんかが嫁いでも喜ばれるはずがないじゃない。

「無能なお前の血が混ざれば、ロックハート家の次代は能力が下がるでしょ」