継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 ぞわぞわとする嫌悪感の中、逃げ出したくなる足にぐっと力を込め、私は姿勢を正した。

「お前なんかのどこが良いのかね」
「……えっ?」
「まぁ、顔は悪くないし、小さいくせに良い胸と尻をしてるから、好色爺なら好みそうだけど」
「な、なんの、お話でしょうか……?」

 嫌な予感に、思わず口角を引きつらせると、継母はにいっと笑った。

「ペンロド公爵夫人に相談したのよ。お前に、ロックハートの女侯爵が近づこうとしているって」

 低い声にドキンッと心臓が跳ねた。

 ロックハート家から届いた手紙を、継母に見せたことはない。お茶会にだって一度だって出向いたこともなければ、行きたいなどと伝えたこともない。

 ロックハート家を(ないがし)ろにするのはどうかと、ダリアと二人で何度か話したことはあるけど、まさか、それを聞かれていたのだろうか。迂闊(うかつ)だったわ。