「この後、ペンロド公爵様にもお会いする。失礼のないように」
「ヴェルヘルミーナ、お行儀良くしているのですよ」
お父様の横で勝ち誇ったように笑う継母は、歪む口元をその煌びやかな扇子で隠した。
どっちがよ。
性悪女はその扇子がないと、根性の曲がった笑顔を隠せなくて大変ね。そう、大声で言えたらどんなに気分がすっきりするのかしら。
ああ、ここから逃げ出したい。
お姉様にお声掛けをしたい気持ちはあるわ。
だけど、この人の横で「娘のヴェルヘルミーナです」て挨拶するくらいなら、家に帰って床を磨いていた方がマシよ。
そもそも、この後のお披露目には国内外から多くの諸侯が集まるのよ。政治的な話ばかりに決まってる。
子どもの私には楽しいことなんて、きっとないわ。
私が失態をさらすと思うなら、家に帰してくれても良いのに。
憂鬱になりながら、無表情の父をちらりと盗み見た。その時だった。
花の香りをまとった強い風が吹き抜け、ドレスの裾を揺らした。


