継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 馬車の停まる音が聞こえたけど、今日、来客の予定なんてあったかしら。
 不思議に思って立ち上がり、窓に近づいたその時、ノックもなしにドアが開け放たれた。

「ヴェルヘルミーナ様、大変です! ケリーアデル様が、お戻りになりました!」

 血相を変えて飛び込んできたダリアに促され、私は執務室を出た。

 継母が王都に出向く時の滞在は、少なくとも五日間。今回も、往復の八日も合わせて十三日間は戻らないと、屋敷の誰もが思っていただろう。

「十日で戻ったということは、滞在はたった二日?」
「お茶会に参加しただけのようです」
「お継母様らしくないわ……」

 継母が急きょ戻ってきたということは、何か不手際があって機嫌を損ねている可能性もあるわね。若い侍女に八つ当たりなんてしていないと良いのだけど。