継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 熱を持った頬が赤く腫れているだろうことは、鏡を見ないでも分かる。毎日のように継母からどこかしらを叩かれ、蔑まれるのには慣れている。とはいえ、痛みに慣れるわけではない。

 この痛みや熱を、ダリアは幼い時から癒してくれた。彼女がいなかったら、もっと早くにくじけて部屋の隅で丸まっていただろう。
 痛みが引いていくと、自然と安堵の息がこぼれ落ちた。

「ありがとう。屋敷の皆を驚かせてしまうところだったわ」
「……そういうことではないと思うのですが」
「なら、どういうこと?」
「ヴェルヘルミーナ様は、ご自身がご令嬢であるということを認識されるべきです」
「それくらい分かっているわ。今、レドモンド家を支えられるのは私だけよ」
「そういうことでは……顔に傷がついたら、社交界に出るのが難しくなりますよ」
「社交界に出るのは、お継母様が許さないわ。私は、病弱で表に出せないってことになってるのだから」

 継母は、私を嫁がせるどころか、表に出す気すらない。

 嫁げといわれたとしても、セドリックが家に戻ってからでないと不安で仕方ないけどね。私がいなくなった途端に、継母が散財して家を潰しかねないもの。