「お前も、姉を見習って良き伴侶を得よ」
「……はい。お父様」
「ヴェルヘルミーナも、もう十二ですものね」
お父様の後ろにいた継母、ケリーアデルは扇で口元を覆いながら笑うと私に近づき、耳元へとその赤い唇を寄せてきた。
くるくるに巻かれた栗毛色の髪が、ガサガサと私の頬を擦り、甘ったるい香水がまとわりつくように鼻にささった。
「無能なお前に、良き縁談などあるものですか」
私だけに届けるように囁かれた低い声が、胸に深く突き刺さる。
お姉様の結婚を誇らしく思い、浮かれていた気持ちが地の果てへと引きずり込まれていく。
今日から、私を守ってきたお姉様はいない。
その事実を突きつけられたようで、私を見下ろす継母の姿をより大きく感じる。
息を呑む私を見て、お父様は何を思ったのか。
「お前たち、無駄話もほどほどにしなさい」
かけられたのは淡々とした言葉。それがさらに、私の小さな胸に重くのしかかる。
私が継母と喜んで無駄話をするなんて、一ミリもあり得ないのに。
どうして、お父様はいつも気付いてくれないのかしら。まるで、私に向けられる継母の声が、お父様には届いていないみたい。
「……はい。お父様」
「ヴェルヘルミーナも、もう十二ですものね」
お父様の後ろにいた継母、ケリーアデルは扇で口元を覆いながら笑うと私に近づき、耳元へとその赤い唇を寄せてきた。
くるくるに巻かれた栗毛色の髪が、ガサガサと私の頬を擦り、甘ったるい香水がまとわりつくように鼻にささった。
「無能なお前に、良き縁談などあるものですか」
私だけに届けるように囁かれた低い声が、胸に深く突き刺さる。
お姉様の結婚を誇らしく思い、浮かれていた気持ちが地の果てへと引きずり込まれていく。
今日から、私を守ってきたお姉様はいない。
その事実を突きつけられたようで、私を見下ろす継母の姿をより大きく感じる。
息を呑む私を見て、お父様は何を思ったのか。
「お前たち、無駄話もほどほどにしなさい」
かけられたのは淡々とした言葉。それがさらに、私の小さな胸に重くのしかかる。
私が継母と喜んで無駄話をするなんて、一ミリもあり得ないのに。
どうして、お父様はいつも気付いてくれないのかしら。まるで、私に向けられる継母の声が、お父様には届いていないみたい。


