継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 今はその意味を知っているし、そこに愛情なんて欠片もないと分かっている。あの人にとって私はただの駒、使い勝手のいい駒にすぎないってね。

 姿勢を正した私は、継母の登場に身構えた。

 さぁ、今回はどんなワガママを突きつけるのかしら。もう、幼い私とは違うのよ。
 涙一粒、見せるものですか。

 勢い良く扉が開かれる。
 姿を現した継母は、金糸の刺繍でごてごてと彩られた真っ赤なドレスの裾を、これ見よがしに翻した。

「ヘルマ! どういうこと!?」

 厚化粧の継母は、足を鳴らして執務机の前に立った。

「どうされましたか?」
「どうもこうもないわ! ペンロド公爵夫人のお茶会に呼ばれていると言ったでしょ。なのに、新しいドレスが出来上がっていないのは、どういうこと!?」

 継母は扇子をパチンと閉じると、その先端を私の頭に叩きつけた。