深いため息を零すと、ダリアは「新しい繋がりを持ちましょう」といい、視線を一通の手紙へ向けた。
送り主はローザマリア・ロックハート。何度もお茶会のお誘いをくださる女侯爵様だ。
「……お義母様に知られたら、裏切りだと言われるわ」
「でも、このまま断り続けるのは、ミルドレッド様のお立場にも影響します」
「お姉様のお立場……」
「お茶会を受ける口実は、いくらでも用意が出来ます。いい機会ではありませんか」
「……考えてみるわ」
私がしぶしぶ頷くと、ダリアはハッとしてドアを振り返った。
ややあって、バタバタと品のない足音が近づいてくるのが、私の耳にも届いた。そして、その足音と一緒に、これまた品性の欠片もない金切り声が聞こえてきた。
「──ルマ! ヘルマはどこだい!?」
廊下の向こうで繰り返される叫び声は、間違いなく継母のものだ。
ローザマリア様からの手紙を、そっと書類の下に差し込んで、私は息を整えた。
また、何か無理難題を持ち掛けてくるのだろう。


