継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「おや、おかしなことを言われますね。ヴェルヘルミーナの母はすでにご逝去されたと、聞いていますが。違いますか、ヴェルヘルミーナ?」

 ローゼマリア様に答えるべく、私はドレスの裾を揺らして振り返った。

 ことの顛末を知るお祖母様とフォスター公爵夫妻は、静かな表情のままでこちらを見ていた。
 ペンロド公爵様は脂汗をかきながら足をガタガタと震わせている。でも、横に座る夫人は瞳を伏せて微動だにしない。なんて、胆の座った女性だろうか。

「無能なあなたを育てた恩を忘れたの!?」
「私の母は、私が十歳の時、天に召されました」
「それは実母の話でしょう!」
「……私の母は亡きマリーレイナただ一人でしたが、本日よりローゼマリア様を母と慕い、ロックハート家に──」
「お黙り、ヘルマ!」

 趣味の悪い扇子を私に向けたケリーアデルが、けたたましく私を呼んだ。

 その声に、条件反射的に体が震えた。
 今でもその呼び名は、無能で惨めな私へと引き戻そうとする。

 だけど、ここで引きずられちゃダメ。

 ケリーアデルを追い出すのよ。しっかりしないと!