継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 これで私は、レドモンドではなくなる。
 私の持つすべての権利は、ヴィンセント様のものとなる。その代わりに、ロックハート家はレドモンドの再興に手を尽くす。それが政略結婚の条件。

 銀の結婚指輪が交換され、誓いのキスがされようとしたその時だ。

「認めないわ!」

 この場にいた誰もが、ケリーアデルを振り返った。

 真っ赤な顔をした彼女は席を立ち、悪趣味な扇子で私を指し示している。

「母である私の承諾もなしに、何をしているの、ヴェルヘルミーナ!」

 おかしなものね。
 一ヶ月前は、この結婚を持ち出して喜んでいた人が喚き散らしている。
 きっと今日まで誰もケリーアデルのいうことを聞かなかったのだろう。進めたこの婚姻を覆すだけの材料を、あの人は持っていない。

 そもそも、ペンロド公爵夫人とそろって、私をロックハートに送ったのは、貴女なのだから。

 喚き散らす声を背中で聞きながら、思わずベールの下で笑みをこぼした。