継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「強く?」
「そのため、人一倍厳しくしてしまった。母親にはなれないものだとも」
「そんな……」

 お父様に、お母様の代わりなんて求めていなかったのに。どうして、本心を私に打ち明けてくださらなかったのかしら。

 もやもやとしていると、ヴィンセント様が耳元で「泣かないで」と囁いた。
 熱い吐息に背筋が震えた。

「お父上は、幻惑の魔女から貴女を隠すので必死だったのだから、責めないでほしい」
「えっ……?」
「貴女が目覚めるまで、守らなければ。強く生きられるようにと……最期まで貴女を心配していた。私が会いに行ったときも、後ろ楯を頼むといわれてね」

 砦で亡くなられたお父様は、息をひきとる数日前に何人かのお客様と会っていたことは知っている。
 最期まで、魔法師団とお家存続を案じて、各方面に協力を頼んでいたのだと思っていた。

 まさか、その一人がヴィンセント様だったなんて。