継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「……複雑なご関係ですよね」
「そうだな。私にも両親たちの関係性はよく分からない。だけど、亡き母のことを語る義母上はとても幸せそうな顔をされるよ」

 目を細めて笑うヴィンセント様に、私も頷いた。
 亡きクレア様のことを話してくださっていたローゼマリア様の瞳には、憎しみや嫉妬のような感情は欠片もなかったもの。

「魔力がなくても、大切な人を助けたい。それが亡き母の口癖だった」
「大切な人を……」
「私を身籠ったのも、義母上を助けたい一心だったそうだ。幼い頃から、耳にタコが出来るほど聞かされたよ」
「えっ!? あ、あの、そんなに幼いときから?」

 まさかの話しに驚き、声がひっくり返った。
 少し目を見開いたヴィンセント様は、優しいお顔で頷いた。

「物心ついた頃から、包み隠さず話された。そうして、母は義母上を『母として』敬うようにと常日頃いっていた。ローゼマリア様がいなければ、貴方は生まれなかった。私たちはローゼマリア様のお優しさに救われたのです、とね」

 ヴィンセント様の二人のお母様は、なんてお優しいのだろうか。