継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 ヴィンセント様から視線を逸らし、グラスをぎゅっと握りしめ、地味なドレス姿をした私の姿を思い浮かべた。

 社交界に立てるわけもない、地味な女。
 こんな私が、真っ当な婚姻を結べるなんて思ってもいなかった。だから、ヴィンセント様との婚姻だけでも、青天の霹靂なのに──

「アーリック族のことも、多少は存じていました。しかし、魔女の話は全く知らず……さらに、その片方が私で、私の前はヴィンセント様の実母様だったなんて。言葉にするのは簡単ですが、まだ、信じられません」 
「そうか」
「私に、大層な力はございません。幻惑の魔女を封じる力なんて……」
「私の母も、そうだった」

 俯きかけた私に、ヴィンセント様はそっと語りかけた。

 空になったグラスが取り上げられ、ナイトテーブルに戻される。
 グラスで冷えた私の手を、ヴィンセント様の大きな手が包み込んだ。

「私の亡き母は、魔法が使えなかった」
「えっ!?」

 ヴィンセント様のお母様も!?──思わず声に出しそうになり、私はグッとこらえた。だけど、驚きを隠すことなどできず、瞳を見開いて彼を振り返った。