継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 横を見ると、優しい眼差しを向ける綺麗なお顔がある。きっと、いくら見つめても飽きることがないだろう。

 昨日、亡きお父様を重ねて緊張していたのが嘘みたいだわ。今は彼の表情を追ってしまう。
 何をお考えなのかしら。私を見つめて、何を思っているのかしら。

 グラスから仄かな香りが漂ってきた。
 ゆっくりとハーブ水を飲み干して、息をついた。

「……正直、今でも混乱しています」
「そうだろう」
「社交界に出ることのなかった私は、貴族の相関関係も書面上のことしか知りません。他のご令嬢より、噂にも疎いです」
「ああ、事情は分かっている」
「ですが、どのご令嬢よりも多くの本を読んでいると自負しております」

 魔法が使えないからこそ、人より多くの知識を求めた。魔法に代わるものを探し、算術、歴史、薬学、経営学、数えきれない学術書も読み漁った。

 お金を数えるのも、交渉の場で銭ゲバ商人に負けじと喋るのも、令嬢らしからぬ姿だろうけど、私にはその道しかなかった。