継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 よく考えなさい、ヴェルヘルミーナ。
 ヴィンセント様と初めて出会ったのは、私が十歳に満たない頃よ。

 彼が私に恋心を抱く訳なんてないわ。妹とか身内の子ども程度にしか思っていなかったでしょう。
 どんなに遠い恋心を蘇らせたって、これが政略結婚であることに変わりはないのよ。

 早鐘を打つ胸の前で手を握りしめて思う。トキメキが苦しいものだなんて、どの本にも書いていなかったと。

 俯いたその時、ドアがノックされた。

 ダリアが戻ってきたのだと思ってほっと胸を撫で下ろし、「どうぞ」と声をかけたのは、失敗だったかもしれない。そう思ったのは、迎え入れてしまった彼の顔を見た瞬間だった。

「ヴェルヘルミーナ、まだ起きていてよかった」
「は、はひぃ!?」

 現れたヴィンセント様に思いっきり動揺してしまい、声がひっくり返った。