継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします


 ぐるぐると考えていた私は、脳裏に浮かんだヴィンセント様の微笑みに、全身が熱くなるのを感じた。

 私のことを嫌ってるなら、あんなお顔をされないのではないか。
 ヴィンセント様に愛していると言われたわけではないけど、少なくとも好意を感じる。

 そんな彼は、私の初恋の人。

 何も起きないだろうとは思うけど、どうして冷静でいられると言うの?
 考えれば考えるほど全身が熱くなり、汗が滴り落ちた。

 待って、待って。
 こんなに汗をかいてしまって、匂いは大丈夫かしら。ヴィンセント様が不快に思わないかしら。汗を流した方がいいかしら。

 でも、そんな二度も湯浴ゆあみをしたら、それこそ「夜を楽しみにしていました」といってるようじゃない?

 せめて、タオルで汗を拭うくらいは──おろおろするばかりだった私は、はたと気付く。

 これでは、期待しているみたいだわ。