ぽすっと音を立ててベッドに体を横たえ、小さくため息をつく。

 さらさらのシーツから優しく甘い香りが立ち上がった。これはラベンダーの香油だろうか。とても心地が良く、身体がベッドに沈んでいくようだわ。

 眠りに誘われるようにして目蓋を下ろし、このまま寝てしまおうかと思ったとき、はたと気付いた。

 ちょっと待って!
 すっかり忘れてたけど、ヴィンセント様とすごす今夜をどう乗りきったらいいかの、答えが出ていないわ。

 全身からどっと汗が噴き出すのを感じ、飛び起きた私は無意識のうちに口元をひきつらせていた。

 男性と夜をすごすなんて、もちろん、初めてのことよ。
 ベッドは一つしかない。
 汗が滝のように溢れ、背中が濡れていく。

 落ち着いて、ヴェルヘルミーナ。

 そもそも、ヴィンセント様が私に懸想することがないかもしれないじゃない。そうよ、女嫌いって噂だってあったわ。初婚のとき、お子様だってお作りにならなかったと、ダリアも言っていたし。