継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 ナイトドレスが置かれたベッドを見て、顔が熱くなる。

 ベッドに天蓋はついていないけど、とても丁寧な作りだと分かる。
 美しい花の彫り物の施された支柱はピカピカに磨かれている。並んでいるクッションやカバーには綺麗な刺繍がされているし、とても素敵な寝具だと思うわ。

 でも、そういう問題じゃないの。

 質素なベッドでもいいから、二つあった方がいいに決まってるじゃない。まだ、婚前なのよ!

「ヴィンセント様はいい大人です。ご成婚前に、つまみ食いのようなことをすることはないと思いますよ」
「つっ、つまっ──!? 婚前に通じるのは神の教えに反するわよ!」
「今時それを守っているのも、珍しいですけどね」

 さらりと怖いことを言ったダリアは、てきぱきと荷物を片付ける。

「でも、良かったではありませんか」
「良かった? 何のこと?」