継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「……覚醒の魔女?」

 聞き覚えのない単語だった。
 その力を意味しているのか、それとも、幻惑の力に相対するゆえについた通称なのか。

「ヴェルヘルミーナ嬢、そなたが覚醒の魔女の力を受け継いだ唯一無二の乙女に、間違いはない。のお、坊っちゃま」

 ウーラさんの視線が、ヴィンセント様へと移った。

 静かに頷いたヴィンセント様は私の手を優しく包み込む。
 力を込めすぎて冷えきった手に、彼の体温がじんわりと広がった。

「……そんな、でも、私は」
「ヴェルヘルミーナ、貴女の胸の奥に閉ざされた魔力は、とても眩い」
「私の……魔力?」

 私を見つめて告げたヴィンセント様の言葉に、ただただ驚いて目を見開く。

 私に魔力があるなんて。そんなはずないわ。
 小さな火すら灯せない私に、魔力なんて涙の一粒すらない。だから、これまで無能だと蔑まれて暴力を振るわれても、奥歯を噛んで堪えてきたのよ。

 もしも魔力があるというなら、どうして、それが顕現しないの?