継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 手を握りしめたまま頭を振ると、ウーラさんはヴィンセント様を手招いてペンダントを渡した。

 強く握りしめている私の指には、じっとりと汗が滲んでいる。
 なにかの間違いじゃないかと、胸の内で焦りと不安が渦巻いていた。

 だって万が一、私がその能力を受け継いでいたとしても、魔力がないのに何ができるっていうの。火ひとつ灯せない無能だってバレてしまったら、きっとがっかりさせるに違いないわ。

 なにかの間違いよ。私がそのペンダントを持っていても、何も起きやしないわ。

 不安に飲み込まれそうになり、ここから逃げ出したくなった。気持ちを押し込めるように、俯いてぎゅっと目を瞑る。

 そんな私の心を知るわけもないウーラさんは、静かに話を続けた。

「あの夜に落ちたもう一つの星、そして闇の花は……幻惑の魔女で間違いない」
「……幻惑の、魔女?」

 その言葉に聞き覚えがあった。
 だけどまさか、ここでその言葉を聞くなんて思いもしなかった。

 恐る恐る顔を上げると、握りしめていた手に、ヴィンセント様がそっと大きな手を重ねた。