継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「よう参った、ヴェルヘルミーナ嬢」
「先ほどは、ご案内ありがとうございました」
「そなたと会えること、長らく楽しみにしておった」
「……長らく?」

 まるで、何年も待っていたというような口振りに、違和感を覚えた。
 ウーラさんはゆっくりと頷く。

「山がそなたの訪れを待っていたのだ。いいや、山だけではない。星も、花も、空も──」

 穏やかな声は、不思議なことを告げる。

 まるでお告げを受けているような気分になっていると、横に座ったヴィンセント様が、囁くような声で教えてくれた。

「お婆は、アーリックの導き手だ」
「……導き手?」
「街で言うところの、司祭といったとこか。山の伝承を守り、森の声を伝えるのが役目」
「森の、声……?」

 初めて聞く話に僅かな緊張を感じていると、ウーラさんは私に「魔法とは何か、知っておるか?」と尋ねた。