手紙の束を執務机の上に置き、それを開くと無意識に口元が緩んだ。

 父の葬儀の後、セドリックはお祖母様と一緒に帝国へ行ってしまった。それっきり会えていないけど、毎月のように手紙が届く。それを読む時間は、何よりも幸せなひと時だわ。

 今月の手紙には、秋から帝国の魔術アカデミーに通うとか、お祖母様の植物園で薬草を育てる手伝いをしていると、楽しそうな様子がびっしり綴られていた。

 手紙の最後に、はとこのライサに贈り物をしたいのだけど、何を贈れば良いのか悩んでいると、微笑ましいことが書いてあったのは意外だった。

 これは、俗にいう恋の相談というものかしら。

 泣いて私と離れるのを嫌がったセドリックだけど、成長しているのね。それに、恋を覚えるくらい豊かな心を育めているってことは、充実した日々を送れている証だろう。
 お祖母様に預けて正解だったわ。

 少しの寂しさと共に、弟の成長を感じて胸の奥を熱くした。