継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 山のふもとに広がる森の中、これほど整った集落があるだなんて、誰が想像するだろうか。

 私たちが暮らす街と遜色のない整った住居は、規模こそ小さいが、木材や石材で丁寧に建てられていると分かる。たくさんの花々に彩られ、足元もきちんと舗装がされている。

 辺境地の村よりも整備が行き届いていそうだわ。

 私がきょろきょろと辺りを観察していると、ヴィンセント様が馬を停めた。その先に、ひとりの老婆がいた。

「お待ちしていました、坊ちゃま」
「……ウーラ、その呼び方はやめてくれないか?」

 苦笑を浮かべながら馬を降り、私に手を差し伸べたヴィンセント様は、出迎えてくれた老婆に「(おさ)はいるか?」と尋ねた。

「お待ちですよ。して……そちらのお嬢様が、ヴェルヘルミーナ様でございますかな?」

 穏やかな声に緊張しながら、スカートの裾を摘まんで腰を落とすと、老婆は「愛らしいお嬢様よの」と笑った。