継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 私たちの後から着いてくるダリアは、最低限の荷物を詰めたトランクを持っている。どうやら、ついてくる侍女は彼女だけのようだ。護衛もいないみたいだわ。
 身軽な旅に、ほんの少しの期待と不安で胸がそわそわする。

 そうして、連れられるまま来たのは中庭だった。

 まさか朝からお庭でお食事なんてことはないわよね。そもそも、朝食を頂いた後だから、お茶すら一口も喉を通りそうにないのだけど。

 不思議に思っていると、庭の中央にあるモザイクタイルの上でヴィンセント様が足を止めた。

 なぜか、そこには馬が二頭いる。
 馬を繋いで毛並みをブラッシングしていた男たちがこちらに気付いた。歩み寄ると、手綱をヴィンセント様へと渡して離れていく。

「あの、ヴィンセント様、どうして馬が」
「アーリック族の住む森の近くまで、一気に飛ぶ」
「え? と、飛ぶ、というのは……?」

 言っている意味がさっぱり分からずにいると、当然、腰へと大きな手が回された。
 体を引き寄せられ、思わず硬直して言葉を失っていると、足元から光の柱が空に向かって打ち上げられた。