継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

「こちらと違い、アーリックに夜会はありません。ドレスやアクセサリーは不要ですよ」
「あちらでご挨拶をするのに、旅装束では失礼じゃありませんか!」
「この装いで十分でしょう」

 ちらりと私を見たヴィンセント様は、ローゼマリア様が用意してくださったほとんどの荷物を、若い侍女達に片付けるように言い始めた。おそらく、夜通し揃えてくださったのだろうに、申し訳ないことをしてしまったわ。
 心苦しく思い、そっと頭を下げた。

「皆さん、申し訳ありません。私のために用意をしてくださったのに……」
「ご心配には及びません」
「若奥様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「お帰りをお待ちしています」

 片付けている侍女たちに声をかければ、彼女たちはにこにこ笑って答えてくれた。
 ほっと安堵していると、ヴィンセント様は私の手を引いた。

「では、行って参ります」
「族長によろしくお伝えください。また、美味しいお酒をお送りしますと」
「心得ております」

 ローゼマリア様に見送られて部屋を後にした。